花に嵐

オタク・備忘録

それは君が君であった故の物語-セラフ・ダズルガーデンの3Dお披露目に脳を焼かれた話をさせてくれ!

 お世話になっております。藤原です。



 突然ですが、3Dって最高じゃないですか?

 


 3Dで観られるようになった様々な角度や、スクショタイムでのゲストライバーとの会話を見るのも楽しく……



 ライブパートでは3Dならではのダンスを見たり、歌に込められたメッセージを受け取るのも楽しい……!


【#セラフ3D】新たなスタート。あなたが居たから。【にじさんじ/VOLTACTION】 - YouTube
www.youtube.com



 今回は最高すぎるにじさんじの3Dお披露目の中から、先月あったセラフ・ダズルガーデンの3Dお披露目が超ハイパーウルトラスペシャル最高だったという話をしていこうと思います。
 というのも、けっこうお披露目を見ただけでは拾いきれない要素とかがあって……それがめちゃくちゃに良いので……。


 なんでオモコロブロスのグルメ紹介記事みたいな冒頭になったかはマジで分かりませんが、やっていきましょう。


 ※この記事にはメタ要素(ライバーの設定に沿ったRPをRPとして扱う等)が含まれます。
 ※個人の感想・推測・妄想です。ご理解のほどよろしくお願いします。





前置き(読まなくともよい)


 自分はにじさんじに所属するライバーのことを、基本的には「ゲーム実況者」「エンターテイナー」「アーティスト」のいずれかの視点で楽しく見ていますが、同時に「彼・彼女らの持っている『背景』と本人の人格やエピソードが交わった時に見えるキャラクター性の表出」を配信内外で語られるエピソードなどから拾い集め、ライバーである彼・彼女らを再認識するということも、配信を視聴する上での楽しみにしています。
 また、これを見せてくれるのは一部のライバーになりますが、配信やTwitter・動画などを活用したバーチャルライバーが自分自身に内包する物語」の表現も大好物です。
 もともと鳩羽つぐやProject:;COLDのようなバーチャルを活用したストーリーラインが好きであったこと、加えてにじさんじを知ったきっかけが2019年の帰れない百物語とそのアフターストーリーで、そこで黛灰と彼にまつわる物語に触れたりしたこともあって、その傾向がより強くなったように思います。


 さて、前回の記事でも軽く触れた通り、セラフ・ダズルガーデンというライバーは、彼が内包している背景と物語の表現が非常に上手なライバーだと思っています。
 そして、その物語のひとつの到達点が今回の3Dお披露目だったのだな……と、彼のお披露目を見て感じました。

 セラフのお披露目は歌唱→先輩ゲストのスクショタイム→アクション(特技枠)→ダンス(特技枠)→バイオリン演奏(特技枠)→歌唱→(奏斗のお披露目へつなげるリレーパート)という、これまで交流してきたライバーたちとの縁や3Dになることでようやく見せられる特技を披露する、3Dお披露目の構成としては王道なものです。アクション部分やダンスはかなり動けることがわかりますし、何より3Dでのバイオリン演奏はにじさんじでも初めてですから、本人の実力に加えてそういった新鮮さも込みで特にセラフの普段の配信を観ていなくとも十分楽しめます。

 構成・内容共に非常に真っ直ぐなので、かつての一部先輩たちのお披露目のように、3Dお披露目内で何か不穏なストーリーが展開するというわけではありません。しかしながら、彼がここに至るまでの10ヶ月で積み重ねて来た『セラフ・ダズルガーデン』を知っていると、このお披露目は少し違った『物語』を覗かせます。
 自分はそれに脳を焼かれたので、彼が語ってきた過去をかいつまんで解説しながら、ファンとしてどういう視点で今回のお披露目を見て来たのかについて書いていこうかなと。




セラフ・ダズルガーデンの物語

 というわけでまずはここからいきましょう。



セラフ・ダズルガーデンは『元暗殺者』であり、今は幸福な『エージェント』である


 セラフが持つ過去はこちらです。

暗殺が生業の家系に生まれ、幼い頃から暗殺技術を磨いてきた。
素性には謎が多く、複数の名前を使い分けている。
現在は暗殺者を辞め、フリーのエージェントとして仕事を請け負う。

 にじさんじ公式サイト‐タレント紹介ページ「セラフ・ダズルガーデン」より引用
 https://www.nijisanji.jp/talents/l/seraph-dazzlegarden


 元暗殺者というのは非常にセンシティブな背景です。何故なら、彼が過去手にかけてきたのは『人間』だから。
 加えて言えば、彼はファンタジー世界などではなく、バーチャル東京という現実に姿かたちや規範が近しい世界で生きているため、そういうルールの世界だからとか相手は人外であるとかの逃げ場はありません。その上で、ロール上の彼はかつて人間の暗殺を複数件遂行していることが、初配信のロールムービーにおいてわかります。(該当箇所再生時間指定済リンクです)

 現実において殺人は重罪であり、エンタメコンテンツとしての性質と、いま画面の向こうに居る一人の人間という性質を併せ持つバーチャルライバーが背負うには、やや重すぎる過去と言えましょう。
 にじさんじを多少見て来たリスナー視点で正直に言えば、放り投げても誰も責めないし問題のない背景設定である……という認識でした。
 

 しかし、セラフはそうしませんでした。
 なぜなら彼はセラフ・ダズルガーデンで、そういう過去を持って生きて来たバーチャルライバーであるからです。


 セラフは配信の中で、「過去に死のうと考えるくらい苦しんできたこと」「いまは闇から抜け出して光の中に居ること」をよく語ります。自分は彼を見始めたのが2022年12月からなのでまだ半年に満たないくらいしか配信を観ていないのですが、それでも300時間ほど配信を視聴した中で、この2点については覚えるほどに何度も話していました。死のうと思っていたことを明確に発言しているのはこの雑談ですね。
【雑談】人生の幸不幸とは。何が受け入れがたいのか。【セラフ・ダズルガーデン/にじさんじ】 - YouTube
(時間指定済みリンク)

 あとはRoom4Sで月光を歌ったときの裏話でも「俺はもう死ぬもんだと思ってたから。なんか知らないけど今幸せに生きられてるから」という発言が出て来たりしています。そういった生き方をしていたことを、「俺は髪引っ張ったって目潰したって生きろって場所にいたから」とかでさらりと補足してくる。ところでこれ別にRPとして喋ってたんじゃなくて相撲の話してたところで出てくるんだから怖いですよね。染みついている……。
 なお、これらの破滅願望については後ほど回収される機があります。(後述)


 それだけではなく、昔から電気を受けていたことで電流に耐性があったりジャンプして音を立てずに着地する訓練をした経験や、幼い頃に父親に庭に連れていかれて空手の特訓させられた話催涙ガスだのスタンガンだので色々あっただの、そういう話がぽろぽろと出てきます。なんで? 本人が背負ってきた過去だからだね……。


 そういった背景を踏まえた上で、いまのRoom4Sやその他外部から仕事を請けるエージェントとしてのRPも、配信内やTwitterにちりばめられています。
 例えばTwitterだと、

 こういうのとか……


 こういうのとか。
 配信における任務についての話はかなり散発的すぎて全部提出するのが難しいのですが(それくらい自然にエージェントとしての任務について触れています)、直近で印象に残っているものだと、スパチャ読みで夜勤の話になった際の「一回潜入でやったことがある」とか、上のツイートでの足首を打撲した任務の補足話とかでしょうか。

 過去も現在も含め、セラフの配信ではそういった「元暗殺者」であり「現エージェント」のセラフ・ダズルガーデンを形作るエピソードがいくつも、しかも結構日常会話の延長線上としてさらりと出てきます。
 ということを踏まえてお披露目を見ると選曲で唸らざるを得ないのですが、しかしてこの話はまだ続くのです……。




4月1日に見た悪夢


 にじさんじのエイプリルフールと言えば、多くのライバーがショタになったりロリになったり美少女になったり美青年になったりジジイになったりする日で有名です。
 その例に漏れず、この日のヴォルタは『嘘』の歌みたを上げたり、嵐のような女にTwitterアカウントを乗っ取られたり、BARのママと犬で配信していたりしたわけですが、セラフは正午ごろまでTwitterに不在。頭が痛くなるほどよく眠っていたようです。



 その後同期たちのエイプリルフールにそれぞれ引用で触れると、自分も同じように何かすればよかったと羨んでいました。



 ……しかし、本人に自覚がないだけで――そのTwitterには彼が0時から見ていた悪夢が表出していたのでした。



 ツイート自体は残っているのですが、アイコン込みで見た方が良いため自身で確保していたログにしてあります。
 4月1日の0時を迎えると同時に、セラフのアカウントは「-Ares」に名前が変更され、アイコン・ヘッダー・bioも変わっていました。なおこのアイコンは真っ暗ではなく、画像を弄るとフードを被った黒髪紅眼の少年が現れます。また、ヘッダーも同様の処理をすると血しぶきらしきものが見えていました。
 
 0時に任務の確認を行った少年は、その後深夜3時からおよそ4時間に亘って13名のターゲットを処理し、夜が明けるとそのまま己と対峙するように自問自答を続けます。
 そして12時。セラフが眠りから覚めると同時に、彼のYoutubeチャンネルには一つの動画がアップロードされました。


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 これまで上げた歌動画について必ず裏話をしてくれたセラフは、今日に至るまで一度もこの動画については触れていません。
 (一応ボダックス先生が動画内イラストを担当しており、その告知ツイートをいいねはしていますが、その後4月1日は体調悪かったわ~と触れたのみでこの動画とTwitterの変化については何も話すことはありませんでした)

 果たしてこのAresという存在が、暗殺者であった頃を更に脚色した悪夢なのか、それとも過去の記憶の追体験か。現状それは定かではありません。答え合わせは永遠に来ないかもしれません。
 ただ途中に挟まれる「また俺は生き残ってしまう」「結局は死ぬのが怖いんだ」という発言は、前述したセラフの過去の破滅願望と一致しています。
 個人的には「13人相手ならどうにもならなくなるかな」という淡い期待が重い。命を奪うと言うことは奪われたくない相手側から本気の反撃があるということでしょうし、そのラッキーキルに期待して、それでも他の誰にもこんな役割を渡せないから自分で降りることもできず、消極的に誰かに殺される夜を望んだまま、訪れてしまった朝に失望と安堵を抱いている。この数ツイートでここまで推測できるくらいに伝わってくるの、すごいよなあと思いつつもシンプルにお辛い……。


 なお、この悪夢について本人から語られることはありませんでしたが、彼の「止まない雨はない。希望はあるよ」「じゃあ今すぐこの雨をどうにかしてくれよ」という『悪夢(楽曲)』に繋がる自問自答については、その後の歌枠振り返りにおいてセラフ本人からひとつの回答が提示されています。

 
www.youtube.com

「俺はさ、師匠が居ると言う話を何度もしたことがあると思うんですけど、師匠が沢山言葉をくれてるんですよ、俺に」
「その中の一つにね、『虹を見るには雨も必要だ』という言葉がありまして。土砂降りの雨に打たれたときに、この雨はいつまで続くのかと嘆き悲しむこともあるだろうよと。ずぶ濡れになってさ、なんて惨めなんだと涙が止まらないみたいなこともあるだろうよと。でも、そこに雨が止んで太陽の輝きが差したときに、その瞬間に虹が架かるんですよ。でも雨が降らないと虹って架からないじゃないですか。虹を見るためには雨を我慢することが必要なんだよって」
「あのとき……あの虹色のね、美しい色を出すには我慢が必要なんだと。土砂降りの雨を耐え抜く我慢が必要なんだと。雨は必ずいつか止むと言ってくれて。そこを我慢しよう、耐え抜こう、あの虹を見るためにって踏ん張れたときに人として成長出来るし、雨が降っているときにそういう風に思って踏ん張って、虹が見られるときが来るよっていうのを忘れないで生きていたいよねって。そういう言葉をかけられたときがあって」
「止まない雨はないとかそういうワード、あまり好きじゃないんですよ個人的には。止まない雨がないって簡単に言ってくれるけど、その時その渦中にいる人間にとって、そんな言葉って何の意味もねえよって思ったりするんだけど。でもそれでも尚、そうやって雨の後に虹が架かるんだということは事実として忘れたくないなという風に思いますし、それで雨が止むまで頑張って耐えたときに、救われるものもあるんじゃないかなという風に思うんで」

(上記配信より書き起こし)


 すっご……(小学生並みの感想)
 おそらく本人にとって本当に重要な話であったとは思うのですが、かの悪夢が雨の路地裏であったこと、そして今にじさんじというステージに立っていることがここまで重みを持つことがあろうか。
 自分は結構この時点で脳が焼かれてました。そして、だからこそこれらを踏まえて観る3Dお披露目が効くんだ……!


 余談ですが、このもう終わりたいとまだ生きていたいに折り合いをつけて「全然地獄に堕ちる覚悟でいる。だから生きてるんだよ」に辿り着いてるの結構すごいですよね。




3Dお披露目の感想

 やっとここに辿り着けたな! ヨシ!
 というわけでここからは、上記の情報を抱えていた自分がお披露目を見てた時の感情を綴っていきます。



ライブパート①-ステラ


 ずるくない????
 
 すみません、デカイ声が出てしまいました。いや、でも冷静に考えてほしいんですけど、あれだけ過去に苦しんでいたことを語った男から、3Dお披露目というライバー人生ただ一度きりの晴れ舞台で出てくる「これはそう 今日を諦めなかった故の物語」は脳が焼けない???? 焼かれたので今回の記事のタイトルになっています。

 振り返り曰く、ステラは「絶対に歌いたい曲」であり、これと「ひとりで生きていたならば」は去年末から既にお披露目での歌唱を決定していたそうです。果たしてエイプリルフールの悪夢をお披露目前に通過したことが必然だったのかは分かりませんが、個人的にはあの雨があったからこそ、「これは まだ僕を諦めなかった故の物語」「世界にとって 僕にとって ふさわしかった役なんて 要らない 知らない 所詮僕は僕だった」がより響いてきて、開幕から号泣していました。多分これが一番早いと思います(お披露目号泣RTA走者)

 歌い方がまた魂の唄って感じで最高なんですよね。幕が上がる前からワクワクと高揚感を味わいながらステージに上がったとは本人談ですが、その喜びが伝わってくる歌唱でした。サビの叫ぶような歌い方も、本人が意識したという「そっと」の静かな歌い方も、ラストの「きっと」がほんの少し掠れて潰れるような歌声なのも、いやマジで魂。一言で表すなら魂。
 
 セラフの熱がこちらにも伝播してくるような、最高の幕開けでした。
 実際お披露目で一番見返してるのステラなんですよね。いつ見てもぐっと込み上げるものがある。カッコいいよお前……。




スクショタイム


 オタクが唯一落ち着けた箇所ですが、自分は過去の記事を見れば分かる通り普通に被験者なので、ゲストでエデン研究職組が来たときは死に際に見る都合のいい夢かな?になってました。現実でした。軽い現実でよかったね~。

 どのポーズも好きでしたし、あと研究職組から始まったアドリブ台詞の流れもめちゃくちゃ面白かったんですが、個人的にウワッ……ウワァーーーーッ!!! となったのは、ポーズ待機中異様にナイフの扱いが上手いところでした。本当に何? 俺もうお前が怖いよ……。手癖でくるくるしちゃうとは言ってたけど、ナイフでもそれをやったらもう……すごいよ……。
 あと教授はいつもオーダーが上手すぎる。プロなのかな……。

 側転オーダーしてくれたフレンにも、首痛めポーズオーダーでなぜかそれはそれで需要がありそうなガチの首痛めを引きずり出してきたりつきんにも、オーダーの熱量怖すぎたけどアドリブ台詞を引っ張り出したレオスにも、普通にシチュエーションとポーズがオタク・大喜ばせだった教授にも、ナイフぺろぺろはマジでどうした? ってなったけどなんだかんだちゃんとカッコイイポーズのオーダーをくれた甲斐田にも、オタクからは感謝しかないです。いや、良かったね~~……。

 あとZ軸を得たミミズクさん可愛かったので3Dで観られて良かったです。また出てこないかなあ。




任務


 オタク待望の殺陣パートを!? と思ったら任務の隠し撮りムービーでした。えにからのカメラ班ってすげ~~!!!

 ボイドラでは複数回聴いていた任務シーンがまさか3Dで観られるとは。その時点で感謝しかなかったんですが、本人のフィジカルが3Dでとうとう観られたのと、戦闘スタイルがマジで普通に喧嘩殺法だったのでしっかりテンションが上がりました。相手のナイフ蹴っ飛ばして別の敵に当てるのとかオタクが好きすぎるやつ。いいんですか?

 あと実は地味に椅子を蹴っ飛ばしている場面が2回ほどあり、前述の足首を打撲した任務が偶然にも可視化されたのもぶち上げポイントでした。まあこの任務とは別の任務なわけですが、なるほどこういう風にその場にあるものを武器にすることもあるんだね……という気持ちになった。最高。


 戦闘職ライバーの3Dにおける殺陣はやはり最高ですが、きちんと任務の1シーンとしてそれを見せてもらえたのはマジで良かったですね。
 ちなみに振り返りにおいてもここに関しては殺陣をやったではなく「休憩中に凪ちゃんから任務来たんだけど」という切り口で話していたので、こういうことを言うとアレですがVtuberを遵守してるな……とちょっと感動しました。ここは振り返りの話も面白いですね。技についての説明が漫画によくいる感覚型の天才みたいな言い回しだったり、任務の中でやってみたい技があってやれそうと思ったらやってみたりしてるとか。ちゃんと任務ちょっと楽しんでるの草なんだ。
 でもこれを職場見学と称するのは笑う。物騒すぎるよ……。




ダンスパート①-ミライ


 無事に任務を遂行し、戻ってきたセラフの次のステージは、ゲストライバーを含めた「ミライ」のダンスパート。
 これがさぁ~~~~!!! いいよねぇ~~~!!!! ダンスカッコ良すぎるんすよね。いやマジで。

 ミライについては本人の振り返りでもにZIPでも結構語られているんですが、複数人で踊る曲をやりたいというきっかけのもとにプロセカを探した結果ミライに辿り着いて、しかもそれがめちゃくちゃ解釈一致しているのがすごい。
 かなりパート分けも拘っていて、個人的にむゆちがルカパートなのが「先輩たち(リリさん・やま)と繋げてくれたのがむゆさんだったから」(プロセカのバチャシンはキャラクター達を繋げてくれる役割があるため)という理由なのがすごく好きですね。オタクは意味がある配役に弱い。

 本人の振り返りにおいて「ミライを選曲した理由は?」という質問からこのお披露目における選曲理由の全体像が語られているのですが、

「俺の人生で経験してきたこと、あとは新たなスタートを切るっていう3Dお披露目という場で、未来への希望であったりとか、俺だけじゃなくて俺のお披露目とかライブとか歌ってる姿・踊ってる姿・弾いてる曲・歌ってる曲、見て聴いた人が、何かその人にとっての元気であったり勇気であったり希望であったり、その一端を担えるお手伝いが出来るようになったらいいなと思っているので、そういう(気持ちを)込めて、全体的な選曲をした」
「だから俺を表すもの、俺を表す曲と、それと俺が伝えたい思いがある曲と、あとはそれを聴いた人が受け取るものが……何かその人にとっての支えのようなものになれると思える曲、そうしたいと思える曲っていうので、曲は全体的に選んでいます」
「それを踏まえてね、アーカイブ等見て頂けたら幸いでございます」

(上記配信より書き起こし)

 
 ミライはそのタイトルの通り「未来への希望」であり、ある意味ではセラフを表す曲なのかな……と感じました。

 自分はプロセカをやっていなくて、今回感想を書くにあたってミライ実装イベのSame Dreams,Same Colorsを一応全部観て来たんですが、このストーリーって冬弥が「これまでの人生で体験できなかった『新しい経験』に挑戦する」ことが主軸になっているんですね。
 その結果ビビバス4人はより絆が深まって、このミライという新曲が「いつもより合っていた」という形で完成する。この選曲においてセラフが冬弥の背景や境遇にシンパシーを感じていたという話はにZIPで語られていましたが、そういったことを踏まえてミライの冬弥パートである「探してたんだよ 僕らが笑える場所」→「見つけたんだよ 僕らが笑える場所」を聴くと、セラフが仲間や先輩たちと笑える場所であるにじさんじに来てくれて良かったなあという感情が湧き上がって来て熱くなりました。
 セラフ自身も自身が新たな経験をしていくことや成長の過程で誰かに勇気やきっかけを与えられたら、という活動方針を定めている人なので、この冬弥の新しい経験がユニットにきっかけを与えるストーリーがバックグラウンドにある「ミライ」が選曲されたの、いいですね……。

 あとダンスが本当にカッコイイ。なんだ……? お前何なら出来ないんだ……?




ダンスパート②-いのちの食べ方


 で、そういった選曲方針があることを話しつつ、他の曲が全部明確に前を向いた曲であることを踏まえた上で、ここにいのちの食べ方が挟まるセットリストはちょっとお洒落すぎませんかね……。
 個人的にこれは「セラフの人生で経験してきたこと」「セラフを表す曲」に該当し、悪夢に対応するものであると思っています。
 歌詞が結構ガッツリ孤独と切望なんですよね。歌詞とMVを含めけっこういろんな解釈がある曲ですが、かつて暗殺者という家系に縛られていたセラフが歌うと「テーブルをみんなで囲みたかったんだ ナイフを突き立てては 君の喉仏を裂いて指先を湿らせたんだ」とかが愛を求めるものであると同時にそのままの意味になってくるのもなかなか面白いなあと。この辺は前にも話した「バーチャルライバーだからこそ生じる物語性」であっていいですよね。
 
 3Dお披露目というのはそのライバーのここまでの全てが詰まったお披露目で、その中でセラフは自分を表す曲も選曲のうちに含んでいて、だからこそ「いのちの食べ方」というこの曲が選出されているのに、ああ暗殺者であった過去も含めてセラフ・ダズルガーデンだし、全部未来へ持っていくんだな~と感慨深くなりました。

 そんでこの曲さぁ!!!! まず歌唱もすごいよね。サビの最高音ファルセットに逃げずに地声でこだわったのもようやる。よう出とる。
 ダンスの振りは振付師さんにつけてもらったオリジナルとのことなんですが、このダンスについての裏話も熱いんですよね。ソロで踊るんだったら誰がどれくらい踊れるかを考える必要が無いので、セラフが出来る最大火力でやれるやつにしようっていう方針で構成されていったという……。実際は慣れてきたにあたってまだやれたかもという感じではあったようなんですが、やっぱお披露目でその時の最高域が見られるのってブチ上がりますよね。
 この振り付け、本人の表現意識もあってかセラフの服のひらみが緩急でめちゃくちゃ映えるすげ~~カッコイイ振りなんだよな……。ダンス全然わかんないからカッコイイしか言えない。でもマジで格好良かった…………。




バイオリン演奏-町の想い出


 セラフの初配信で一番印象的だった部分ってやっぱりバイオリン披露だと思っていて、自分はそうだったので彼がデビューしてからずっと3Dでのバイオリン披露が見たかったんですよ。
 叶った……。
 あとなんかバイオリンキャスで弦変えてたのが伏線だった……。わかるかそんなもん!!!!!!

 後日談を聞く限り弦月ももうちょっと出来たなとは思うと話していたし、セラフも本番は湿気のせいかバイオリンの調子があまり芳しくなかったようで、のびのび演奏出来たながらも二人にとってはほんの少し心残りがある演奏ではあったようですが、それでもこの2人のセッションで初めてセラフの3Dでのバイオリンが観られて良かったなあと思います。
 朝日昇るウユニ塩湖ステージでのバイオリン、シンプルに美しすぎるんですよね……。
 あと選曲が誰もが知っているようなクラシックや、初配信の時のようなJ-POPではなく、本人が強く影響を受けている古澤巌のオリジナル曲だったのも良いですよね。まさしくセラフの軌跡でもある……。

 最後の方手が震えていたというエピソードも含め、視覚的にも聴覚的にもグッとくる演奏でした。またバイオリン演奏観たいなあ。個人的には最初に疑似セッションしたエリコニちゃんとの3Dセッションもいつか観たいところです……!




ライブパート②-ひとりで生きていたならば


 ずるくない???????

 失礼しました。2度目のデカイ声が出てしまいました。
 いや、でも冷静に考えてほしいんですけど、そもそも雨が物語において重要なファクターだった男が青空の下で、笑顔で歌っているというその光景がもうずるいですよね?

 アカペラスタートのこの曲ですが、始まりのコード弾きがない状態でもきっちり音を合わせて来たのは流石の音程自信ニキだなという感じでした。本番前の大博打に勝ってるのカッコよくて草。
 本人が強く影響を受けていると公言しているSUPER BEAVERからの選曲、いいですよね。この曲は未来への希望であり、宣言であり、そして伝えたいメッセージが込められた曲なのかなと思っています。

 自分は3Dお披露目でライバーが一番最後に歌う曲って全部リスナーに伝えたい本質を包んでいるものだと思っていて、だからこそラストの歌唱がこの歌だったことにかなりグッと来ているんですが……。
 加えて言えば、その前に「いのちの食べ方」を挟んでいるセトリの妙もあるし、これまでセラフがかつて苦しみを抱いていたことを話してくれ続けてきたこともあるし、結構前の雑談で「寂しいと思う頻度が増えてしまった」「心が弱くなりました。というよりは無機質じゃなくなったのかな」と発言していたり、歌枠で歌った世界の真ん中を歩くのMCで「君たちと出会ってだいぶ変わりましたね。すごく楽しくなりました」と告げていたり、そういう積み重ねがあったからより刺さったのかなあと。
 いまの『セラフ・ダズルガーデン』はもうヴォルタの仲間やにじさんじの先輩、そしてリスナーが居るからひとりではなく、そんな男からの「ひとりで生きていたならば こんな気持ちにならなかった」「自分自身を諦めそうなときに 思い浮かぶ 人と想いと記憶と ともに心の底から笑い合うんだ それだけ譲らずにこだわっていくよ」がお披露目の最後に飛んでくるのはもう、すごいじゃん……。いま聴き直したらまたちょっと泣けてきた。多分これが一番遅いと思います。
 あと「こだわって生きると 今一度言い切るよ」がいいですよね。生きることに対し、然して執着がないとこだわりも抱けないので。こだわって生きると言い切れるほどに今をちゃんと生きている。格好いい男だよ。
 終盤の「僕ひとりの話ならば こんな気持ちにならなかった 僕ひとりの話ならば いくつ誤魔化してもよかった」のところ、ひとりの話ならば いくつ誤魔化してもよかった」に歌詞変えしてるの、より自分の言葉としてメッセージを伝えたい気持ちが伝わると共に、バンドのライブが好きな文脈を感じてそれも良かったです。ライブは往々にしてそういうことがあり、そういった歌詞変えがまた良いのだ……。

 MCは全部アドリブだったと言うことですが、最後の晴れやかな「あなたが居たから立てたこのステージです。あなたが居たから笑えた今日です。今日は紛れもなく、俺にとって大切な大切な1ページになりました」で結構ビックリするくらい涙が出て、自分ってまだ涙腺にこんな水分残してたんだ……と驚きました。ここの語りかけが画面の向こうにいる「みんな」じゃなくて「あなた」相手なの、リスナーと言う有象無象のひとりひとりの目を見ていて、あ~~~~どこまでも真っ直ぐな表現者だなあ!!! と大の字になりました。良すぎ。

 そんでもって本当にラストの「また次の配信でお会いしましょう。ご視聴ありがとうございました。お疲れさまでした。じゃあね、ばいばい」って、セラフの配信のいつもの終わりの挨拶なんですよね。
 これもすごく好きで、この3Dお披露目と言う日がセラフにとっては特別で大切で、そしてこれまで続いて来てこれからも続いていく日常の1ページなんだなと思って、それも良かったです。オタクは重要な回で1期のEDが流れたりするのに弱いからな……。


(2023/06/12追記)
 この記事を読んだ方から感想と共に、以下のような情報を頂きました。

これはお披露目後にみつけたのですが、SUPER BEAVERを好きになったのが昨年の夏頃のフェスだそうで。ライブで圧倒されたと話していました。「あなたがとか胡散臭く言えるのが凄い」(曖昧です)という話をしていました。お披露目配信で何度も「あなたが」と言ってたのが、そのフェスで出会った人たちに影響されて言えるようになったのかなと考えたら嬉しい気持ちになりました。

 記事を書いていた時に、そういえばセラフが影響を受けていると振り返りでも明言していたビーバーもBUMPもMCであなたたちじゃなくてあなたって言う人たちなんだよな……というところをカットしていたのですが、この情報を受けて、いやそれは確認せなアカン!!! と思い当該アーカイブを探しました。ありがとうございます!
 だいたいこのあたりからビーバーについて語っているのですが……。

「極論言うとさ、音楽をやるっていうその世界において、上手いとか下手とか……まあ大事だけど、上手いから響くんだけど。無くてもいいよなあっていう風に思ったりして。届けたいものがあって、それが届いたらそれが一番いいよな。そういう音楽をやりたいなと思いました。昨日は」
「だってさぁ……ねぇ? あんな大勢の人間が見てる前でさ、『愛してるが歌いたい』だの、『ありがとう』だのさ、『あなたたちが居るから』だの、そんなさ……普通に言ったら恥ずかしくて臭い臭いあいたたたたってなっちゃうようなことをさ、大声で叫ぶんだよ。最高だよな」
「だから……もしね、今後俺はライブやりたいなって思ってるからさ、まあそれ相応の力をつけないと、やらせてはもらえないと思ってるんだけど。やりたいなあっていう風に思ってるから。そのときは、自分が……自分の表現し得るすべてのものでぶん殴れるようになりたい、なっておきたいと思いました」

【Minecraft】図書館作るぞおおおおお【セラフ・ダズルガーデン/にじさんじ】 - YouTube より書き起こし)


 か、完璧な回収すな~~~~~~!!!!!!!!!!!!

 このあと「フェスでSUPER BEAVERを聴いて泣いた」という話に繋がっていくのですが、それくらい感銘を受けたバンドの表現を受けて、数万人が見届けるお披露目の前で、「今日は、本当に本当にありがとうございました。あなたが居たから立てたこのステージです。あなたが居たから笑えた今日です。今日は紛れもなく、俺にとって大切な大切な1ページになりました」が出てくるわけじゃないですか。まだお披露目が遠い未来だった頃のセラフが見た、そんな恥ずかしいことを大声で叫ぶ憧憬を彼は叶えたわけじゃないですか。しかもこのMC全部アドリブだそうですから、セラフの本心から出て来た「あなた」への言葉なんですよね。
 そして歌もダンスもアクションもバイオリンも、5月19日までのセラフの持ちうる全てで、このお披露目はリスナーのことを殴ってきたわけじゃないですか。

 それはもう、すごいことすぎる。
 もともとそうだと分かってはいましたが、やはりセラフは自己プロデュースと自己実現の鬼だなと思いました。ていうか輝きに憧れた人が同じ輝きを放つことに弱すぎるため、ここを聴いたことで情緒が大変なことになってしまいました。どういう顔してひとりで生きていたならばのパート聴けばいい? 今後……。


 MCも歌詞変えも含め、セラフがバンド文化に出会い、それを愛してくれて良かったなと心から思います。
 今後ヴォルタが舞台に立つときが楽しみすぎるな。一体どうなっちまうんだ……。




エンディング-そして雨は止む


 お披露目リレーということもあり、これまでの四季凪・雲雀のお披露目は必ず最後に次のメンバーにバトンを渡すストーリーパートが挿入されていました。
 もちろんセラフの配信も例に漏れず、最後はこのバトンパートで終わります。
 ……が、このパートがすごい。マジですごい。


 雨降る夜の路地裏を歩くセラフから始まったこの映像に、セラフの活動を追ってきたリスナーは高確率で4月1日の悪夢を思い出したと思います。
 しかしそこから続くのは、襲い掛かってきた追っ手を気絶させて平和的に処理し、奏斗へ電話をかけて物語のバトンを渡し、仲間が待つカフェへ向かおうとしたところで雨が止む――そんなささやかな物語でした。

 雨の上がった空を見上げたセラフが「……あ、止んだ」と呟き、友人が待つカフェZeffiroの扉を開けて終わる。
 描写としてはただそれだけなんです。でも、そのただそれだけが、あの悪夢を見た身にどれだけ刺さるか。そしてどれだけの物語性を持っているか。


 美しいなあと思いました。お披露目において悪夢の具体的な姿が出てくることもなく、そういった過去があったことをお披露目本編で明確に見せることもなく、ただこれまで語られた言葉で積み重ねられて来ているから、セラフが青空の下で笑いながら歌う姿、雨の路地裏、殺さないで気絶させた追っ手、仲間との電話、「……あ、止んだ」の一言。それらのシーンが積み重なるだけで、ああ救いはちゃんとあったんだって分かる。すごい構造だなと。

 そしてそれらの物語を何も知らなくても、追っ手に襲われたのを処理し、奏斗へ事後処理をトスし、そのまま一緒にご飯を食べに行くという、若干のアクション要素を含んだセラフらしいストーリーラインになっていることに、シンプルに感動しました。
 何度見ても良すぎる。すごいな……すごい……。


 あとこれは本人が振り返りで話していたのですが、「入りのタイミングで降っていた雨がお披露目後に止んでいた」っていう話、すごくないですか?
 セラフの物語って雨が重要な要素になっているという話はしましたが、その結実の日に現実世界でも雨が止んでるの、そこまで来たらもはや運命だよな……と感嘆しました。すごすぎ。人間はすごいことが起きすぎるとすごすぎしか言えなくなります。





終わりに


 初めに話した通り、自分はバーチャルライバーが自身に内包している物語を魅せるための表現が大好きです。
 だからこそ、セラフのお披露目の終わりを見て、その描写がこれまで積み重ねて来た暗殺者の少年の物語に繋がっているのだと感じて、うわ!!! まだこんな表現があったんだ!!! こんな風に物語を表現できるんだ!!! と本当に嬉しくなりました。
 ……まあ、全部自身の解釈なので! 特に意味なんかないかもしれませんが! そこはね、表現ってそういうものですから。見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込むこともあろうよということで。

 いずれにせよ、そういう風に心を揺らされたからこそ、このお披露目は私にとっても大切なものになったのだと思います。

 
 以下余談。


 めっちゃ長くなっちゃった! まぁいいか!
 とにかく、セラフの3Dお披露目はマジのマジに最高でした。今も何度も見返してます。やっぱステラがね……いいね……。本当にいい……。魂の歌唱っていいよね~。
 これから3Dの身体を得たセラフがどんなものを見せてくれるのか、それもすごく楽しみにしています。
 ダンスめちゃくちゃやる気のようなので! いろんなことが見られるといいなと思います。


 以上です。