いや~、面白すぎましたね。
こんな……どうにもならなくなっちゃうこと、あるんだ……。
星導のデトロイトを最初に観た時、QTEがけっこうギリギリだったので、どこかでQTEが致命的に失敗し、結果的に致命的な選択ミスをして後悔することがありそうだなと思っていました。
全然そんなことなかった。いやまあQTE自体はそこそこ苦戦してましたが、全部星導自身が下した細かい選択の積み重ねで、こんなにどうしようもない事態になってた。そんなことあるんだ。すごすぎ。そういうゲームなんですよね。
自分は星導をめちゃくちゃ積極的に追っているわけではないので、このデトロイト3パートだけを通した感想になりますが、彼はある程度ドライなところはあれど、基本的に深層は善良で思いやりがある人だな、と思いました。
特に序盤は、機械は機械として見て、ラインを引いているんですよね。だからこそ「アンドロイドは感情を持たない」を前提とした上で、「つうかさぁ…写真見て微笑ましくするのはアンドロイドとして正常なの?感情あるよね?明らかに」や「道を選ぶのはアンドロイドとしては正しいのか?それ」などの疑問を呈していたり、カーラが変異しようとしているのを壊してしまう! とやや(自責になることを含め)怯えて止めようとしたり、コナーが死ぬたびに(4回も死ぬコナー初めて見ました)でも替えがあるから……〇人目がすぐ来るから……とコナーがアンドロイドであるが故のドライな前向きさを見せていたりする。
あと特筆してドライな部分と言えば、武力解決を望まない理由が「人間には勝てない、数が多すぎる」だったところとかでしょうか。これ現実味ありすぎていいですよね。
それでも隠し切れないやさしさがあるので、子供であるアリスが躾の範疇を越えて叩かれそうになっていれば、機械だから命令通り動いてないで~す! をしていてもすぐに翻して動くことが出来る。アリスのわがままを聞いて寒い夜を右往左往も出来るし、僅かに会話を交わしただけの家族から、バスのチケットを黙って奪うことも出来ない。
人の考えや事情があることを推し量ることが出来るので、マーカスを妬むレオに対して「愛されるような人間になりなさい!じゃあ!」という叱咤を飛ばした直後、カールが若い頃に絵に没頭して彼を蔑ろにしていたのかもしれないという発想にも至れる。
共感性があるというか、物語を読み取る力が高くて、かつやさしさが垣間見えます。海賊の入り江でアリスがメリーゴーランドに乗るまではやいのやいの言ってたけど乗って楽しそうにしてるのはずっと黙って見て、「幸せになろう」って一言が出て来たのとかね、あたたかいよね。
だからこそ、関わってきた様々な人にけっこうきちんと向き合っている。特に終盤の彼は、物語を通してかなりきちんと変異体になったアンドロイドたちを人間として見ています。それは変異体であることを拒み、命令を遂行する機械になり果てたコナーへの呼びかけもそうでしたし、ボートを押すために停止する覚悟で飛び込んだカーラに「死んじゃうよ!」が出るところもそうだし、マーカスを生きさせるために自分を犠牲にしようとするノースの提案を受け入れられず、自分の選択でマーカスを犠牲にするのもそう。
変異した彼らを人間として見ているからこそ、最後機械であることを貫き通してしまったコナーに、「もう俺は間違えないぞ。もう俺は間違えない!お前は機械なんかじゃないよコナー!変わって見せろ!自分の意志で!」と熱い希望を託す。それが、もうどうにもならない状況であっても。
そんな物語への向き合い方がとてもグッと来て、面白くて――。
――しかしこの世界においては、中途半端にやさしいだけでは何も救うことは出来ない。
星導のデトロイトは、それが最もよくわかる物語だったんじゃないかなと思います。
星導の選択って、別になにも悪くはないんですよ。いやまぁ保身のためのウソついてたりはしたけど……。
ややフラついてはいますが、自分の中の指針があった上で、何とかよくなる方向を模索してはいる。星導が画面の外の人間だからこそ、やさしくなるような選択肢を解釈して――そして、命を賭けて戦うアンドロイドとは乖離してしまう。
狙い通りにマーカスがスタッフの足を撃っていてくれれば世論はカスになっていなかった。でもマーカスにとっては命が脅かされているわけだから、撃つならもう殺すしかなかった。ここまで立場が追い詰められてしまったからには、もう武力に訴えるしかなかった。
変異体になることを踏み切れていたら、ハンクとの結末は変わっていた。でもコナーはここまで変異には至っておらず、それでもハンクと多少分かり合えていた。だからここでリスクを冒して変異体になる必要はないと判断した。
家族にバスのチケットを返しても、あの場に居た誰かや偶然再会したトッドが都合よくバスのチケットを融通してくれれば、闘争の外に居たカーラたちだけでも救えたかもしれない。でもあの場に居たのはみんな「外に出ざるを得ない理由」がある人で、そんな奇跡は起きない。
そういう理想論的な選択や、アンドロイドがアンドロイドであることで星導の意図していた意思から乖離してしまった細やかな選択肢を積み重ねた結果、あの誰も幸せにならないエンドが爆誕していたの、もう芸術ですよね。
いや……めちゃくちゃ味がしたな~。
あとやっぱりバーチャルライバーであるからには、ライバーが背負っている自身の人生に沿った反応を見るのも好きなんですけど、星導ショウが『ヒーロー』であるからこそ、もう本当にどうにもならなくなってしまった終盤の畳みかけるような「背負わせないでくれよ。もう俺疲れたよ他人の命背負うの~!変わってくんない?ちょっと」「今までで一番悪くない人を撃ってしまった。ヒーローですどうも、こんにちは……w」「俺には選べないよ;;無理だよ~;;」「何を救えばいいんだもう;;分からない俺には;;」「誰も守れないのか俺は。嘘だろ」「何が?どこで間違えたの」「もう疲れた」の泣き言と、闇堕ちしそうな声の絶望感が凄まじすぎて良かったです。カーラだけはギリ生存を許されていましたが、それでも絞り出すような「もう疲れた」で引導を渡すの、完全に破滅願望でしたからね……。その前に他人の命を背負うのに疲れたことを嘆いているのもしっかり回収しているのも含めて良すぎるし、潔いし、虚しすぎる。
エンドトークの「もうダメだ俺、ヒーローじゃいられないよ。何が正義かわかんなくなっちゃった」「でも人間からしたら俺は英雄って称えられるんでしょうね。アンドロイドを止めたから。……止めるつもりはなかったけど」もめっちゃいい。英雄ってそんなものなんですよね。誰かにとっての英雄は、打ち倒された側にとっての悪ですから……。
ヒーローってこういう形で闇堕ちするんですね! 参考になりました。正直、愉悦であったことは否定できない。
で、そんな絶望の結末を見た最後、本人の〆のトークがすごく好きで!
「いやよかった!もう……いつかデトロイトをプレイするんじゃないかと思って、誰のデトロイトも見ずにね、この人生を歩んできて良かった本当に。138億年」
「まあもしかしたら記憶喪失になるまでに誰かの見てたかもしれないけど。それはね、知りません」
「面白いけど面白くない。もうやだ。二度とやりたくない」
「もう一回やりたいのにもう二度とやりたくない」
「この三日間ずっとねぇ、寝ても醒めてもデトロイトのことしか考えられなかった。そんくらい一気にやりたくなるし、もう二度とやりたくないし、なんか……すごいわ。本当に。そりゃこんなに愛されるゲームになるよ」
「またいいゲームに出会えて良かった」
【Detroit: Become Human # 4】人 vs アンドロイド vs タコ【星導ショウ/にじさんじ】 - YouTubeより
彼はすごくゲームが好きな人だし、ゲームが見せてくれる物語に真摯なんだなと感じられて、ここは聞いててなんだか嬉しかったです。
そりゃこれだけの希望と絶望の相転移を一気に見せられればもう一度やりたくても二度とやりたくなくなるだろうし、だからこそそんなエンドを迎えた星導が、「誰のデトロイトも見ない人生を歩んできてよかった」「また良いゲームに出会えてよかった」でこの実況を締めくくるのは素晴らしい終わらせ方だなあと。
本人からこの感想を聞けたことも含め、視聴者としても良い実況視聴体験になったなと思います。
あと本当にめちゃくちゃ好きなんですけど、最後感情を得たクロエ(タイトル画面のナビゲーターアンドロイド)がここから発つことを望むシーン、星導が変異体たちのすべてを殺してしまったからこそ、「もう誰にも死んでほしくない」という理由で最後に残った変異体である彼女を手放せなかったの、凄まじいエンドだなと思いました。
しかも別にそこまで頻繁にクロエに会っていたわけではないので然程思い入れもなさそうで、なのにそのエゴにも近しい理由で繋ぎとめておくの、星導からアンドロイドへ送れる最後のやさしさを感じるシーンでもあって良かったです。
彼女の背中を押すかも含めてDetroit Become Humanだと思っているんですが、自分が今まで視聴したデトロイトの実況は一部苦い別れもありながらもクロエを行ってらっしゃいと送り出せるものばかりだったので、そういう結論に至ることもあるのか……と目が覚める思いでしたし、素晴らしいエピローグだったと思います。
だからやっぱり人のデトロイトって、いいよね……。
ここに来るまで、星導ショウという人間がデトロイト未見だったことに心からの感謝を。
優しいとは言えど決して聖人ではなく、保身や逃げに走りたがるような弱さもある。そんな彼がプレイしたからこそ、この物語は人間もアンドロイドも強い人間味に溢れ、星導にしか辿り着けない結末を迎えたのだと思います。
マジで最高の三日間で、最高の『生』を見せてもらえる素晴らしい実況配信でした。
格納しちゃったせいで記事の長さ短めなので、今更サルバドールめっちゃ良かったね……の気持ちを込めてサルバドール紹介しとこうかな……(マジで嘘みたいに今更すぎるだろ)(もう200万再生に行こうとしている歌なのに?!)
ご本人が自分の歌いたい曲を歌っているだけと仰っているので選曲理由に触れるような感想でちょっとアレですが、星導が鑑定士としてなんか言ってるとき、だいたい芸術……主に絵画の鑑定に触れていることが多いので、鑑定士としてサルバドール・ダリをモチーフにしているこの曲を一発目に歌ったのお洒落だな~とも。
これもわりと「星導ショウ」というライバーが歌うからこその良さに溢れているカバーだなと思い、もともと自分がそういうライバーの歌みた動画が好きなので、かなり気に入って最近ずっと聴いています。